ZYX 製品コンセプト&テクノロジー
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じめに 音、それは本当に不思議なものです。同じような特性(周波数特性、歪率特性)を持っている2種のアンプの比較試聴や、カートリッジの比較 試聴で、全く異なる雰囲気の音を感じとることがあります。時には特性上では良いはずのソリッドステートアンプより、ローパワーの真空管ア ンプの方が、何故かより力強く、繊細で生き生きとした音に聞こえるといった事もあります。まさに、音は単に特性のデータだけでは語りきれ ない不思議さと、奥深さがあると言えます。 ちなみに、今までご使用のカートリッジの左右チャンネルそれぞれの音のサウンド・バランス(低域・中域・高域の全帯域での音の量感のバラ ンス)をチェックされたことはあるでしょうか?アンプのバランスボリュームを回して、左右単独に音を聴き分けることができますが、多くの 場合、右側のバランスは高域に寄りがちで、明るく、高めのキーに偏って聞こえてくるのに対して左側は重く、太く、低めのキーに偏っている ことに気がつかれることでしょう。ボーカルで言えば、右側は10才若く、左側は10才歳をとったような・・・。そして更に言えば、左右ど ちらの音にも、本来の原音と等しいキーとサウンド・バランスを持っていない、ということに気がつかれることでしょう。試験したカートリッ ジの左右の諸特性が全く同一であるにも拘わらず、このような事が起きるのです。 このような事から、データ本位で設計を行っている限り、この問題は解決されないことになります。確かに特性データを指針にして、カート リッジの構成パーツの性能は向上してきました。円針から楕円、ライン・コンタクト、そして究極のマイクロ・リッジ針へ、カンチレバー素材 では、アルミ合金から宇宙素材であるボロンへと、軽量、硬質化が進められ、トータルで広帯域、低歪率化へと性能改善されています。しか し、基本となる音質そのものについてその奥深い領域ではどのような改善がなされてきているのでしょうか?左右の音質が異なるといった重大 な欠陥が、今なお存在して良いのでしょうか? ZYXでは、音を評価する場合、データは10%程度の影響度を持たないと考えています。残りの90%の計測不能の領域、つまり再生音を決 める要素について、長年にわたり検討してきました。左右の音質が異なって聞こえる原因について、左右の音を比較試聴しながら改善方法を検 討することが、音を決める要素は何かを見極めるのに丁度好都合の道標となりました。 結果的には、15項目に亙る発電系の構成についての改善を行い、レコードに刻まれた機械的な音声信号をストレートに電気音声信号に変換で きる発電系を設定左右同等、且つフラットなサウンド・バランスを持った、真のステレオを再生するMCカートリッジの開発に初めて成功して います。ZYX−Rシリーズは、この究極の発電系を採用。振動系には現在得られる最高のパーツを搭載して、最高品位のステレオ再生を提供 します。 |
音の要素
について 音について考える前に、まず他の現象を見てみることにします。例えば液晶プロジェクターには、赤青緑の光の3原色が配列されています。そ してこれら3原色のパターンを発光させることにより、幾通りもの色を再現します。カラー印刷も同様、色の3原色赤青黄を基本に多様な色を 表現します。これらのことから色は、原色を中心にして混合される事により、全く別の色に変化する性質を持っていることが分かります。 音ではどうでしょうか。一本のマイクロホンでオーケストラ演奏を録音したとしますと、マイクロホンで拾われた音声は、一本の電気信号とな り、各楽器群の音はその一本の波状信号(アナログ信号)の中に収められます。色の混合と同じ状態になっています、がしかし、この電気信号 をスピーカで音という形に変換されると、バイオリン、ピアノ、ボーカル...各楽器の持つ固有の楽音が、混合することなく、明瞭に聞き分 けることができます。当然のことなのですが色の混合の現象からみると、非常に不思議なことと言わざるを得ません。音とは、何か特別な性質 を持っているいうことが知れます。合成の出来ない性質ということから、音は3次元の性質をもっている、と考える以外には他にありません。 音の成分で、周波数をx軸、振幅(レベル)をy軸と考えると、もう一つの軸、つまりz軸という次元が存在することになります。それは明ら かに時間のファクターになります。色現象では、絵画、テレビでは静止画がありますが、音では静止音というものはないのですから(デジタル 音声では有りますが)。 更にいえば、色は、色合い(x)、明度(y)よりなる2次元情報、つまり平面的な情報であるために、合成する性質を持つことになります。 しかし、音の現象では、時間軸という次元を更に持った立体情報であるために、混音されないことになります。そしてこの時間軸情報こそ、音 を決める要素になっています。 長年に亙る研究の結果、カートリッジに於いて、発電の系で様々な時間軸の要素に作用する弊害が存在し、それは再生音のクォリティーに非常 に影響を与えている事が判明しました。それは発電量に応じて磁気回路に発生する逆起電力であり、渦電流であり、動的誘導磁界であったりし ます。これらは発電信号の時間軸に乱れを起こさせます、時間の歪みといっても良いでしょう。前項で述べた左右の音質の違いは、90度直交 して配されている左右チャンネルの発電コイルに、弊害信号が結果的に異なるベクトルで作用して起きた一つの症状といえます。 音楽再生で、いかに時間軸情報が何等の影響を受けず原音通りに正しく再生されることが重要であるかは、それは,ZYXのRシリーズの再生 音を聴かれる時、直ぐお分かりになることでしょう。(x、y)で示されるデータ化し得る要素も大切ですが、z軸のファクターこそ、音のク オリティーに直接関係する基本となるべき最重要な要素なのです。 このことから、レコードのRECORDINGは、録音と訳すのではなく、録時と訳すのが適切ではないかと思われる程です。演奏している時 間が記録され、一定の速さで過ぎ去る時間にそって、(x、y)の成分が立体的に記録されていく...。従って正しい再生は、演奏していた 時点と同等な時間要素をもって、原時間を再生して、始めて得ることが出来るのです。 補 ・・・[音の要素について]の続き (本文を完結し、音の性質を明確にする為に補充します。多少ともCDのハード、ソフトに携わる業界に対して失礼になるのではないかと危 惧しますが、デジタル・サウンドについても検証してみる事にします。) 時間は一定の速さで、止まることなく過ぎ去ります。そして音楽は、時間情報そのものです。更に、音の要素の中の時間軸の成分が、オーディ オ・システムの持つ音質と重要な関係にあります。前述のように、音質の90%がこの時間再生の性能に拘わっているからです。オーディオの 本来の楽しさ、奥深さは、この時間の再現の追及にあるといっても過言ではありません。クリアーな時間の復調がクリアーな音を再生します。 この神聖な時間の領域に、音声をデジタル処理することに 汲々とする余り、音声信号を時間軸で分断(1秒間に約4万個)するといった行為は正しいことでしょうか。そして再生において、デジタル音 声の時間軸(Z軸)は、分断された時間片の配列によって再製されます。時間は、1,2,3・・・と数えられる性質のものではなく、常に川 の流れのように途切れないものであるのに。 更に自然界にない恐ろしい現象として、切断された音声信号は、時間軸を失った単なる二次元情報(x、y成分のみ)でしかない、ということ に注意しなければなりません。前述のように二次元情報の色と同じ性質を持つこととなります。つまり混色ではなく混音といった異常現象が発 生します。それはまさに異常な人工音声です。自然の摂理に反した行為への一つの代償といえるでしょう。 デジタル信号による音楽は、この混音の連結によって、再び “アナログに近い” 音に戻す操作を経て再生されます。演奏者が一人の場合は 混音は起きないでしょう。しかし複数の演奏者による一般の音楽では、必然的にこの弊害は発生します。欧米のスピーカ・システムでポピュ ラーな全指向性のスピーカで聴くデジタル音は、左右スピーカの中央に音像が凝縮して、全指向性特有の演奏会場を思わせる包み込まれるよう な奥行きのある音空間が、全く再現されないといった症状を呈します。又、よく耳にするデジタル音(符号音)の苦情、柔らかさがない、堅 い、金属的艶がない、ざらざらしている、余韻が少ない、きつい、立ち上がりがあまい・・・等々。これらは混音により別の合成音に変化して いることを物語っています。音の変質は問題ですが、この自然に存在しない音を、自然なものと思い又は思い込もうと聴いている人には、どの ような障害を与えるでしょうか。特に頭脳の成長段階にある青少年に与える影響は・・・?欧米にはデジタル・ノイローゼという言葉がありま すが、非常に心配なことです。 エジソン以来100年余、より原音に近い音楽再生へ、先人 が行ってきたアナログ分野での努力と技術の進歩の過程で、電子工学のハイテク技術を駆使できる現在、従来極めて難解であったオーディオの 分野で音楽をデジタル化し単純化するという方向は、時代の流れとして必然であったのかもしれません。しかし結局デジタルはその意味する通 り、符号でしかないということに、気付かなければなりません。時間を切ったり止めたり神をもしない行為、二次元の映像処理と同じ考えで、 三次元の音声処理を行う行為は、進歩の一過程なのかもしれません。時間という神聖な領域を汚すことなく、音の三次元要素を追求していく処 に、真のハイテク技術は駆使されなければなりません。 |
ZYX MCステレオカートリッジの特長
A リア
ル・サウンド発電系 一般にカートリッジは、針先形状、カンチレバー材質などの機械系の性能が注目されてきていますが、機械一電気変換のトランスデューサです から、むしろ電気系の構成、性能に注視しなければなりません。オーディオ・システムにあって、最初の音声電気信号を発電するといった役割 を持つことから、最重要なコンポーネントと言っても過言ではないでしょう。 カートリッジの発電系とは、再生針、カンチレバーでピックアップされたレコードの音声の機械信号に対して、カンチレバーの振動速度に比例 した電力を発生する部分をいいます。発電系の構成パーツは、カートリッジ本体に固定されMC型の場合、発電コイル、コイル・ボビン、一対 の磁気ヨーク、そしてマグネットとなっています。つまり一様な磁場内で、コイルが回転振動することによって起電流が発生する構成になって います。これは丁度、レコードのカッティングの逆の動作となります。理論的には、カッティング工程と同質の変換システムで再生を行うわけ ですから、レコードに記録された音声信号を、そのまま発電出来なければなりません。 しかし実際には、前述のように、発電系には様々な音の時間軸情報を乱す弊害敢えていえば、時間歪が生じ、原音とはかけ離れた異質な再生音 へと変化してしまいます。カンチレバーや、ダンパー等の機械パーツをいくら取り替えてもこの問題は解決しません。 左右の音質が異なるといった大抵のカートリッジにあった欠陥は、この時間歪によることが長い研究の結果判明しています。左右の周波数特性 がフラットであっても、時間歪みにより高音域がより速く、又は低音域がより遅れて変換されると、高音に偏った明るくきつい音を発します。 低音のボリューム過多の音はその逆となります。そして全帯域同時に発した音は、フラットなバランスで聴くことができるのです。発電系に発 生するこの時間歪を解消させることは、原音再生の為には、避けて通ることのできない関門となります。 カット・アンド・トライを何度も積み重ねた結果、発電系に誘起する逆起電流、磁性材料の表面に発生する渦電流、そして磁気回路を一つの ループとして誘起する逆磁界、などが発電磁場に磁気的に働き、結果として、発電音声信号のz軸情報、即ち時間情報を乱す主因であることが 判明しました。そしてこれらの原因究明と並行して、それぞれの誘導磁場を予防もしくはキャンセルする手段を開発するべく、基本的な作業を 繰り返し行い研究を進めました。z軸の成分は、データとして表すことの出来ない要素ですから、判定はただ聴感にたよらなくてはなりませ ん。しかし幸いなことに、左右の音質が同質になるかどうかをチェックしていくことが良いので、好都合となりました。時にはミュージック・ テープからラッカー盤をカットし、両者の音を同時試聴して、カートリッジの左右のサウンド・バランスをチェックしました。 その長い研究の結果、次の15項目全てに、正しい設定が不可欠であることが明らかとなりました。この中の一つの項目でも、誤った設定を行 うと、左右同等の音を得ることは不可能です。従来の発電系の構成パーツを基本に15の条件設定があることから、同じ構成パーツを使って、 2の15乗(32768)もの種類のカートリッジが出来ることになります。そして、その中のただ一種の組合せ、全項目にて正しい設定の カートリッジのみが、時間歪から完全に解放され、時間軸にストレートな応答性を得て、左右全く等しい音バランスを持ったステレオ音を再生 することが出来るのです。 発電系の条件設定項目(P): 特許又は実用新案出願済. 1.マグネット磁極方向 2. 発電コイルの巻き方向 3. 左右チャンネルの発電コイルの配置方法(P) 4. コイル・ボビンの磁気誘導電流対策(P) 5. 発電回路素子の磁気誘導電流対策 6. 発電回路内の磁気誘導電流の制御方法(P) 7. 発電回路内の動的磁気誘導電流対策(P) 8. コイル・ボビンの接地の可否とその方法(P) 9. ヨーク材の接地の可否とその方法(P) 10. マグネットの接地の可否とその方法(P) 11. ターミナル端子配置方法 12. カートリッジ外装の素材(金属又は非金属) 13. カートリッジ外装の接地の可否とその方法 14. カートリッジ外装とトーンアームとの接地の可否とその方法 15. 発電コイル線材の方向性の設定 一例として第3項目:左右チャンネルの発電コイルの配置方法について説明してみましょう。 両チャンネルのコイルを同一ボビンに巻く方法は、従来図1のように振動系としは左右対称で妥当のように見えます。しかし電気的に見てみま すと、垂直軸を中心とした巻き方で、垂直方向の振動成分は実は、左右の差信号(逆位相)ですので電気的に対称とはいえません。 図2の巻線方法はR1000シリーズに採用している方法で、左右同相の信号方向、つまり水平方向に対して対称となっています。この方法は 電気的に対称であるばかりでなく、出力端の+−端子の位置も対称となります。仮にモノーラル結線を行って両者を比較してみますと、図3、 図4のようになり、R-1000の出力端は、互いにクロスすることなく水平方向にスムーズに出力されることとなります。更にR-1000 のコイルは線材の方向性による再生音の変化を解消するように図5のように二重としています。 |
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マイクロリッジラインコンタクトスタイラスの拡大写真 |
マイクロリッジラインコンタクトスタイラスの寸法 |